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不動前-狭小住宅④クレーム発生「CGと違う」

月曜の朝、通勤途中に工務店から電話がかかってきた。

日曜日に建主さんが現場を訪れ、「階段がCGと違う。」と、トラブルになっている。

なんとかしてほしい、と。

 

通勤ルートを変えて工務店に直行。

説明を受けてクレームの内容はわかった。だが、その原因と対策は見えない。

そのまま、現場監督と一緒に現場へ向かう。

 

階段はまだ作られていない。

階段の穴は転落防止のためコンパネで塞がれて、階段回りは薄暗い。

てっきり、すでに製作された階段をご覧になって、起きたクレームだと思っていた。

 

クレームの発端は、一部回り段のある階段部分を側桁から柱付きすると、現場監督が建主さんに説明したためだった。

既製品の階段を使うにはそうなるみたいだ。

建主さんは「そんな話は聞いていない、CGと違う。」

 

現場監督の頭には、既製品を使って柱で受けるか鉄製しかない。

直接、大工さんと回り段の納まりを相談する。

階段横の下地壁に階段の絵を描いて、協議する。

 

側桁は階段開口上部の梁に支持できる位置まで延ばす。

梁下にある回り段は側桁に納まるよう、桁背を大きくする。

梁背内に位置する回り段は梁に支持する。

壁側の回り段は柱で受け、稲妻状の巾木とする。

これを図面にして、午後に工務店に送る。

 

今回は監理契約はないので、工事が始まれば施工者任せになる。

施工者が監理者になっている。

施工者と建主が同じ情報を共有して、契約書通りに施工することが基本中の基本。

しかし、工事の都合で簡単に設計は変更されてしまう。

関西の大コンクリート建築家は、凄まじい図面を描いておきながら、「図面1割、現場9割」という。

それほど監理とは重要なもの。

 

住宅の設計なら、大学1年生の夏の課題でできてしまう。

だから、住宅の設計は建築士なら誰でもできてしまうと、思いがち。

しかし、設計を専業にしている者との差を大きい。

それは測ることはできないが、要所要所に違いは現れる。

自分もまだ先人や著名住宅作家にはおよばない。

 

設計を実現させる技と術が監理に現れる。

監理は品質管理・時間監理・コスト管理・安全管理と、師から教えられた。

設計者によらない監理がどこまでできるのか。
似て非なるものにならなければよいのだが。