月曜の朝、通勤途中に工務店から電話がかかってきた。
日曜日に建主さんが現場を訪れ、「階段がCGと違う。」と、トラブルになっている。
なんとかしてほしい、と。
通勤ルートを変えて工務店に直行。
説明を受けてクレームの内容はわかった。だが、その原因と対策は見えない。
そのまま、現場監督と一緒に現場へ向かう。
階段はまだ作られていない。
階段の穴は転落防止のためコンパネで塞がれて、階段回りは薄暗い。
てっきり、すでに製作された階段をご覧になって、起きたクレームだと思っていた。
クレームの発端は、一部回り段のある階段部分を側桁から柱付きすると、現場監督が建主さんに説明したためだった。
既製品の階段を使うにはそうなるみたいだ。
建主さんは「そんな話は聞いていない、CGと違う。」
現場監督の頭には、既製品を使って柱で受けるか鉄製しかない。
直接、大工さんと回り段の納まりを相談する。
階段横の下地壁に階段の絵を描いて、協議する。
側桁は階段開口上部の梁に支持できる位置まで延ばす。
梁下にある回り段は側桁に納まるよう、桁背を大きくする。
梁背内に位置する回り段は梁に支持する。
壁側の回り段は柱で受け、稲妻状の巾木とする。
これを図面にして、午後に工務店に送る。
今回は監理契約はないので、工事が始まれば施工者任せになる。
施工者が監理者になっている。
施工者と建主が同じ情報を共有して、契約書通りに施工することが基本中の基本。
しかし、工事の都合で簡単に設計は変更されてしまう。
関西の大コンクリート建築家は、凄まじい図面を描いておきながら、「図面1割、現場9割」という。
それほど監理とは重要なもの。
住宅の設計なら、大学1年生の夏の課題でできてしまう。
だから、住宅の設計は建築士なら誰でもできてしまうと、思いがち。
しかし、設計を専業にしている者との差を大きい。
それは測ることはできないが、要所要所に違いは現れる。
自分もまだ先人や著名住宅作家にはおよばない。
設計を実現させる技と術が監理に現れる。
監理は品質管理・時間監理・コスト管理・安全管理と、師から教えられた。
設計者によらない監理がどこまでできるのか。
似て非なるものにならなければよいのだが。