わたしたちが設計する狭小住宅には、自然と引戸が多用されている。
開き戸とは違って開放感や連続性があるからなのか、それとも引戸からイメージされる襖や障子の開閉に優しさやが想起されるからだろうか。
病院や高齢者施設、学校・幼稚園・保育園など、弱者に対しては引戸が中心。
それ以外の設計では開き戸が中心になる。
住宅でも引戸を使う機会は少ない。
和室が減ったためか。
引戸は和、開き戸は洋とイメージしがちであるが、日本古来の神殿や寺院は開き戸である。
とはいっても平安時代になって内部建具が登場する。
それまでは目隠し目的で、衝立を建てたり布を掛けて仕切っていた。
それが発展して、柱・梁・敷居を区画する内部建具となった。
引違が生まれ、そこに室内装飾としてそこに絵も描かれることとなり、今の襖の原型が生まれた、そうだ。襖は日本発祥だと。
部屋が小さいと引戸が増えることについて。
開き戸はドアが回転する範囲内にものは置けない。
トイレなど内開きにすると便器に当たってしまうこともある。
あるいはトイレの出入りが窮屈になる。
引戸だとその心配がない。
図面に引戸を書くと、壁と平行な扉幅の線が増えるだけ。
開閉時の障がいが少ない。
ただし、引戸が納まる壁に柱があると、引戸は壁から出てしまう。
逆に柱がなければ、壁を薄くして引戸が壁よりも出っ張らせないこともできる。
開き戸を開け放しにしていると開いた側に壁がないと落ち着かない。
不思議なことに引戸にはそれがない。
歴史的に見ても引戸は、視線を遮るための薄い布や簾が始まりで、もともと開放的で透過性のあるつくり。
それに対して、開き戸は建物の外部と内部を明確に分け、風雨をしのぎ敵からの防御のために用いられた。
今の住宅をみると外部のアルミサッシには引違が、室内は開き戸がよく使われいる。
面白いことに、歴史とは逆になった。